2011年3月7日月曜日

おいてけぼりの町

そこはかつての私が暮らしていた町です。 
朝も夕日も夜も海も花も山も坂道も、、そのすべての景色にかつての私がいました。 

3年前の夏のことです。私は島根県にある小さな海の家へ訪れました。そこで私を待っていたものは日本海へ沈んでいく美しい夕陽でした。砂浜に捨てられていたボロ椅子に腰掛け、2時間ほど夕陽が見えなくなるまで、私は空を眺めていたのです。 

その年の春、家のベランダにはシンビジュウムの花が大量に咲いてくれたので、私は花へ感謝の想いを込めて最後の一輪が枯れ落ちるまで毎日、花を描き続けました。 

落ちてゆく夕陽を見つめることが、枯れてゆく花を描くことと自分の中で重なっているように感じました。 

大阪へ戻って、見てきた夕陽を絵に遺そうと絵の具で描いたのですが、どうもピンときませんでした。ちょうどその頃、たまたま友人から「貼り絵の先生をやってくれませんか」と言われ、試作品を作るとこれが楽しくて「そうだ!貼り絵であの夕陽を描いてみよう」と、夏から秋にかけて60点ほどの貼り絵作品が出来上がりました。 

そして2010年の夏、また友人から貼り絵の制作依頼があり、これがきっかけで再度貼り絵ブームがおこり50点ほどの作品が出来たのです。 

2010年は私の環境が一変しました。心おちつける場所をなくし、日々を忙しく過ごしました。この貼り絵を作る僅かな時間だけは、まるで瞑想でもしているかのように心を静めることができたのです。おちつきのない私の心に軽い「おもし」のような役目をしてくれたのが貼り絵でした。 

貼り絵に浮かぶ景色は私がおいてけぼりにした景色です。でもなにかの拍子に立ち止まった時、目の前に現れるような、、どこかで私を待ってくれているのでしょうか? 

その「おいてけぼりの町」では、今でも私が暮らしているかもしれません。 



 ボクの個展「おいてけぼりの町」が2月7日より20日まで大阪靭公園近くにあります「月夜と少年」というギャラリーで開催します。今回は「貼り絵」作品を展示します。ちょっと変わった展示方法で作品を見ていただきます。2月13日の日曜日は終日、誰でも参加できる貼り絵教室をします。参加費は500円です。2月20日はボクのワンマンショーです。夕方6時からちょこまかいろいろとやってみます。こちらは参加費1000円となります。気楽に遊びにいらしてくださいね。水曜日は休廊させてもらいます。