このたびいぬんこが絵本を出すことになりました。「おかめ列車」というタイトルの絵本で8月後半には各地の本屋に置いてもらえるようです。なんせ「いぬんこ」名義での初絵本となりますから、本人も嬉しいやら不安もあるやらと複雑な胸中のようですが、少しだけお手伝いをさせてもらったボクから見れば、おもしろい仕上がりになっていると感じます。
「おかめ列車」というぐらいですから、この物語には「おかめ」の顔をつけた列車が出てくるわけです。実はこの列車、数年前に「犬子動画舍」で制作したアニメーション「楽しや汽車の旅」に登場しているものと同じキャラクターです。アニメーションでも絵本でも、おかめ列車の存在は「この世とあの世をつなぐものであり、異界からの使者」なのです。
多くの物語には「異界からの使者」という存在がさまざまなキャラクターとなって出てきます。人はそういう存在をどこか身近に感じるからこそ、そんな存在を含む物語をこよなく愛しているはずです。
この絵本おかめ列車では小さな子どもたちをある異界へと導いてゆきます。子どもはこの世にやってきて間がないので、異界というかあの世の記憶がまだ遺っているから、異様なものだってすぐに受け入れることができるのでしょう。大人はどうしてもこの世での経験が多過ぎて、異界を素直には受け入れることができないから、芸術という形にしたものでやっと感じることができるのかもしれません。
いぬんこの実家はちょうど線路が近くにあって、窓を開けていると走る電車の音が聞こえます。寝ぼけまなこで電車の音を聞くと、列車に乗っているようにも感じます。あるいはここが駅のホームで自分はベンチに座って次の電車を待っているような錯覚にも襲われます。高校生のいぬんこはこの部屋で電車の音を聞きながら、これから旅へ出る心の用意をしていたのでしょう。
今、ボクはこの部屋でこうして文章を打ちながら、ビーチボーイズの「ペットサウンド」を聴いています。ラストナンバー「キャロラインノー」が終わるとすぐに踏切の音と電車の走る音がします。そして犬が鳴きます。それらすべての音がどこか哀しくも響いてきます。
アニメ「楽しや汽車の旅」のラストはこのアイデアを頂戴しています。異界への旅を終えた男が踏切にボケ〜っと立っています。踏切の音が消え遮断棒が上がってゆくとやっと男は現実の世界へと戻ってこれるのです。異界で見たさまざな景色は夢のようであり、いつかの故郷のようであり、、
あれ?今、同じ音が外から聞こえてきます。
ボクもどこかへ連れていかれるのかなあ?
まだまだ旅をする運命になっているのかなあ?
、、おかめ列車に揺られながら。
ではこの夏、絵本「おかめ列車」をどうぞご覧下さい。